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糖尿病の初期はほとんど自覚症状がないため、血液検査で血糖値が多少高くても、放置してしまう方がいらっしゃいます。しかし血糖値が高い状態を放置すると、以下のような症状がみられるようになります。症状が出るのは、一般的に、糖尿病がかなり進行してからであるという点には注意が必要です。
糖分の多いジュースやお酒をテーブルにこぼすとベタベタして手にくっついてしまうのと同様に、高血糖状態が続くと血管内がドロドロになります。そして、血管の細胞の中にブドウ糖が変化した物質が蓄積されるなどして「血管障害」が進行し、血管を詰まらせたり、傷つけたりしています。最終的に、以下のような様々な合併症を引き起こします。
1)細い血管の合併症に伴う症状
①糖尿病網膜症
小さな虫のようなものが飛んでいるように見えたり、全体的に黒いカーテンがかかって見えたりするような目の症状が出現します。糖尿病網膜症がさらに進行すると、
視力低下や視野が狭くなるなどして、最終的には失明の可能性もあります。
②糖尿病腎症
尿検査で蛋白が出るようになるほか、次第に、全身のむくみやだるさ、貧血といった症状があらわれるようになります。
最終的には、腎臓で尿を作り出すことができなくなり、血液透析療法が必要となる可能性があります。
③糖尿病神経障害
腕や手、足先のしびれや冷え、両手両足に手袋をつけ、靴下をはいたような異常感覚があらわれます。
また、自律神経が障害されると、立ちくらみや便秘、下痢、排尿障害などを引き起こします。
2)太い血管の合併症に伴う症状
①冠動脈疾患(狭心症及び心筋梗塞)
胸痛、息切れ、めまいなどの症状があらわれます。
②脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)
頭痛、呂律が回らない、言葉が出てこない、手足に力が入らないなどの症状があらわれます。
③末梢動脈疾患
手足のしびれや冷え、痛みなどの症状があらわれます。
最終的には、足の組織が死んでしまい、感染症を併発すると下肢切断などに至るケースもあります。
糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病の2つに大別されます。
■用語の説明
膵臓のインスリンを出す細胞(β細胞)が破壊され、インスリンの分泌量がごくわずか、または無くなってしまうことによって血糖値が高くなる病気です。β細胞が破壊される原因はよくわかっていませんが、本来外部からの異物を排除するはずの免疫機能が、自分のβ細胞を攻撃することが要因の1つではないかと考えられています。1型糖尿病は全糖尿病患者の5%程度であり、割合的には少ないといえます。また、肥満の人が糖尿病になるといったイメージがあるかもしれませんが、1型糖尿病の場合、比較的やせ型の若い人に発症しやすいといわれています。1型糖尿病のほとんどが、インスリンによる治療を必要とします。
「β細胞からのインスリンの分泌量が少なくなる」、「インスリンが効きにくくなる(血糖値を下げる力が下がる)」ことによって、血糖値が高くなる病気です。原因としては、遺伝(受け継いだ遺伝子の違いによって、病気になりやすい体質)と環境要因(食事や運動習慣、ストレス、喫煙習慣など、ライフスタイルや環境による影響)の2つの側面が挙げられます。
以下、2型糖尿病の方の体内における変化についてご説明いたします。
2型糖尿病の方の多くが、肥満により「インスリンの血糖を下げる力」が低下
→ 血糖を下げるためにより多くのインスリンが必要となる
→ インスリンを出している膵臓のβ細胞が疲弊し、過労(死)状態となる
→ β細胞が減少し、インスリンの分泌量が減少する
→ β細胞は血糖値を下げるホルモンを分泌することのできる唯一の細胞であるため、インスリンの分泌量減少によって血糖が下がりにくくなり、血液中のブドウ糖濃度は高いままとなる(高血糖)
ご自身の健康診断結果を確認し、健康診断結果票の判定や医師の指示に従いましょう。
次のうち、どれか1つでも該当した方は、糖尿病の疑い(糖尿病型)があります。
※糖尿病には、下記以外の診断基準もあります。
①血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)
② HbA1c(過去1~2カ月前の血糖の平均)
次のうち、どれか1つでも該当した方は、糖尿病予備群(糖尿病の境界型)です。
※糖尿病予備群には、下記以外の診断基準もあります。
健康診断を受けることの最大のメリットは、病気の早期発見・早期治療であり、多くの場合、自覚症状がないところから、身体の状態を一通り調べていくことになります。したがって、健康診断で行われる検査は、身体の主要な部位について“広く”検査を行い、精密検査が必要な部位を探していく、というイメージになります。単に、血糖値などの糖代謝検査のみを行っているだけでは、それに関連する検査項目以外の身体の“サイン”を把握することができませんが、健康診断において、広く一般的な検査を行うことによって得られる情報が増え、結果的にそれが正しく身体の状態を評価することにつながります。また、頻度は少ないものの、糖尿病合併症が示唆されるような所見(たとえば、眼底出血や下肢の皮膚変化など)が認められることもあります。
ここからは、糖尿病の予防及び日常生活の留意点(改善のためのポイント)についてお伝えします。なお、医療機関を受診されている方については、必ず主治医の指示に従ってください。
内臓脂肪の蓄積により「TNF-α」「FFA」「レジスチン」という物質が増加します。その物質によって「インスリンの効きが悪くなる」「血液中の糖が使われない」「血糖値の上昇」といったことが起こります。内臓脂肪を減らすためには体重と腹囲を減らし標準体重を維持することが大切です。BMIが25以上の方や、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の方は減量を心がけましょう。
現在の体重から3%減量することで血液データの改善が得られるといわれています。そのためまずは、3-6ヶ月かけて現在の体重から3%程度減量することを目標にしてみてはいかがでしょうか。
減量の基本は「摂取カロリー」が「消費カロリー」を上回らないようにすることです。食べる量を調整して「摂取カロリー」を減らし、体を動かし「消費カロリー」を増やしましょう。糖尿病予防には食事・運動両面からのアプローチが重要です。
①規則正しく食べる
朝食・昼食・夕食を決まった時間に食べる習慣を付けましょう。空腹時間が長くなると空腹後に摂取した食事により血糖が急激に上がりやすくなりますし、ドカ食いにもつながります。また、インスリンを出すβ細胞は、食事の時間を覚えてインスリンの準備をするということが明らかになりつつあります。したがって、安定的かつ効率的なインスリン分泌のためには、朝食は午前8時頃、昼食は12時頃、夕食は19時頃までに食べるようにするなど、食事の時間を一定にすることが重要であると考えられています。
②食べる順番や食べる速さを見直す
食べる順番や食べる速さを見直すことで、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。食べる順番について、食事の際に野菜を最初に食べること(ベジファースト)が推奨されるということはご承知の通りであり、この方法は血糖値の急上昇を防ぎ、糖尿病予防や管理に役立つとされています。しかし、このベジファーストが一般に広く伝わる過程で、その効果や目的がやや誤解されるようになったといわれています。本来のベジファーストの研究は、「野菜だけを食べて10分休んだ後に米だけを食べる」という特定の条件下で行われたものであり、その結果、食後の血糖値が抑制されることが示されました。一方で、一般的に広まったのは「野菜を先に食べればよい」「野菜を先に食べると痩せる」という単純化された形でした。目的は、血糖値の急上昇を防ぐことにありますので、副菜(野菜など)や主菜(肉や魚など)から先に食べること、そして、ゆっくりよく噛んで食べることがポイントとなります。
①食物繊維を積極的にとる
上記の通り、食物繊維には消化管からの血糖の吸収を抑える効果があるため、食物繊維を積極的に摂ることで食後の血糖値の上昇が緩やかになることが期待できます。また、食物繊維は消化に時間がかかり、お腹に長く留まるため、満腹感が持続しやすくなります。食物繊維を多く含む食品は、主に「野菜類」「キノコ類」「海藻」「果物類」ですので、これらの食品を積極的にとるようにしましょう。
※果物類には糖質が多く含まれていますので食べ過ぎには注意しましょう。
1日の摂取量の目安は、以下の通りです。
野菜・キノコ類・海藻類:350g程度(生野菜だと両手いっぱい分、茹でると片手いっぱい分程度)
果物:200g程度(握りこぶし1つ分程度)
②間食は控えめに
間食をすると血糖の高い状態が続き、インスリンを分泌するβ細胞に負荷がかかります。1日の間食の目安摂取カロリーは200kcal程度までとされており、見た目量で表現すると1日に片手で収まる量です。食べすぎに注意しましょう。
間食を控える方法としては、以下のような方法があります。
また、甘い飲みものにも糖分が多く入っています。水やお茶、ブラックコーヒー、無糖紅茶、無糖炭酸水など、無糖飲料に置き換えてみましょう。
③主食に偏ったメニューにならないようにする
お米、パン、麺類などの主食には糖質が多く含まれています。「ラーメン+チャーハン」、「うどん+天丼」、「パスタ+パン」など主食の重ね食べをしている方は1食当たりの糖質の量が過剰になっている可能性があります。糖質は体の中で消化吸収され「ブドウ糖」に変わり、血糖値を上昇させます。また、ブドウ糖が多すぎる場合、余分な分は中性脂肪として蓄積され、肥満の原因にもなります。重ね食べを控える、大盛りやおかわりを控えるなどして主食の摂りすぎに注意しましょう。うどんやラーメンなどの麺類は塩分の過剰摂取にも繋がりやすいため、麺類の頻度を減らしお米を主食とした定食を食べるようにすることがおすすめです。
有酸素運動により筋肉への血流が増えると、ブドウ糖がどんどん細胞中に取り込まれることによってインスリンの効果が高まり、血糖値は低下します。また、筋力トレーニングによって筋肉が増えることでも、インスリンの効果が高まり、血糖値は下がりやすくなります。ただし、運動しない日が3日程度続くとその効果は失われてしまうとされています。また、有酸素運動と無酸素運動の両方を行うことで基礎代謝が上がり、それによって減量の効果も高まります。
1日30分程度を目安に、ウォーキング・速歩・水泳・サイクリングなどの有酸素運動を行うようにすることをおすすめします。ウォーキングだと1日に10000歩程度歩くことが効果的であり、さらに、その際に持続的に20分程度速歩きを取り入れることが目標とされています。また、連続しない日程で週に2~3日の筋力トレーニングを行うことが勧められています。最近の研究では、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることによって、より良い効果が生まれることが明らかとなっています。
運動のタイミングとしては、原則、いつ行っていただいても構いませんが、食後30分から1時間後に運動を始めるとより効果的とされています。食後30分から1時間後に血糖が一番上昇するためです。
ビールやワイン、カクテルや果物が入ったサワーなどの甘いお酒は糖分が含まれているため血糖値を上昇させます。また、アルコール自体に、インスリン分泌を抑える働きがあることから、高血糖を招きやすくなります。したがって、アルコールの種類に関係なく、節酒を心掛ける必要があります。アルコールの1日あたりの目安量は、1合(ビール500ml/缶チューハイ7% 350ml 1缶/ハイボール2杯/日本酒180m/焼酎100ml/ワイングラス2杯程度)までであり、週に2日はお酒を飲まない日を設けることを推奨します。
たばこを吸うと糖尿病にかかりやすいことが、国内外の多くの研究によって明らかにされています。喫煙することによって交感神経が刺激されることで、血糖値が上昇しやすくなるためです。また、タバコは血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きを妨げます。
心理的ストレスを感じたとき、自律神経の交感神経が活発になるため、血糖値を上げるホルモンの分泌が活発になります。さらに、ストレスに晒される時間が長くなると、血糖値の上昇も慢性化しやすくなります。ストレスによる血糖値上昇を防ぐためには、ストレスの解消が一番の対策となり得ますが、誤った方法でストレスを解消しようとすると、その解消方法によってさらに血糖値が上昇しやすくなることがあるため、注意が必要です。ストレス解消の手段を飲食や喫煙等に頼るのではなく、散歩や親しい人との会話、趣味など、自分に合った複数のストレス解消法を見つけておくことが大切です。
1.糖尿病の症状
(1)高血糖による症状
糖尿病の初期はほとんど自覚症状がないため、血液検査で血糖値が多少高くても、放置してしまう方がいらっしゃいます。しかし血糖値が高い状態を放置すると、以下のような症状がみられるようになります。症状が出るのは、一般的に、糖尿病がかなり進行してからであるという点には注意が必要です。
(2)糖尿病合併症による症状
糖分の多いジュースやお酒をテーブルにこぼすとベタベタして手にくっついてしまうのと同様に、高血糖状態が続くと血管内がドロドロになります。そして、血管の細胞の中にブドウ糖が変化した物質が蓄積されるなどして「血管障害」が進行し、血管を詰まらせたり、傷つけたりしています。最終的に、以下のような様々な合併症を引き起こします。
1)細い血管の合併症に伴う症状
①糖尿病網膜症
小さな虫のようなものが飛んでいるように見えたり、全体的に黒いカーテンがかかって見えたりするような目の症状が出現します。糖尿病網膜症がさらに進行すると、
視力低下や視野が狭くなるなどして、最終的には失明の可能性もあります。
②糖尿病腎症
尿検査で蛋白が出るようになるほか、次第に、全身のむくみやだるさ、貧血といった症状があらわれるようになります。
最終的には、腎臓で尿を作り出すことができなくなり、血液透析療法が必要となる可能性があります。
③糖尿病神経障害
腕や手、足先のしびれや冷え、両手両足に手袋をつけ、靴下をはいたような異常感覚があらわれます。
また、自律神経が障害されると、立ちくらみや便秘、下痢、排尿障害などを引き起こします。
2)太い血管の合併症に伴う症状
①冠動脈疾患(狭心症及び心筋梗塞)
胸痛、息切れ、めまいなどの症状があらわれます。
②脳血管疾患(脳梗塞、脳出血など)
頭痛、呂律が回らない、言葉が出てこない、手足に力が入らないなどの症状があらわれます。
③末梢動脈疾患
手足のしびれや冷え、痛みなどの症状があらわれます。
最終的には、足の組織が死んでしまい、感染症を併発すると下肢切断などに至るケースもあります。
2.糖尿病の2つのタイプ
糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病の2つに大別されます。
■用語の説明
食べ物から摂取された糖質は、消化吸収の過程を経て、最終的にはブドウ糖に分解されます。
ブドウ糖は私たちが活動する中でエネルギー源として利用され、生命を維持するために重要な役割を担っています。
血液中のブドウ糖の濃度が上がると、膵臓のβ(ベータ)細胞からインスリンが放出され、血糖を下げます。
(1)1型糖尿病
膵臓のインスリンを出す細胞(β細胞)が破壊され、インスリンの分泌量がごくわずか、または無くなってしまうことによって血糖値が高くなる病気です。β細胞が破壊される原因はよくわかっていませんが、本来外部からの異物を排除するはずの免疫機能が、自分のβ細胞を攻撃することが要因の1つではないかと考えられています。1型糖尿病は全糖尿病患者の5%程度であり、割合的には少ないといえます。また、肥満の人が糖尿病になるといったイメージがあるかもしれませんが、1型糖尿病の場合、比較的やせ型の若い人に発症しやすいといわれています。1型糖尿病のほとんどが、インスリンによる治療を必要とします。
(2)2型糖尿病
「β細胞からのインスリンの分泌量が少なくなる」、「インスリンが効きにくくなる(血糖値を下げる力が下がる)」ことによって、血糖値が高くなる病気です。原因としては、遺伝(受け継いだ遺伝子の違いによって、病気になりやすい体質)と環境要因(食事や運動習慣、ストレス、喫煙習慣など、ライフスタイルや環境による影響)の2つの側面が挙げられます。
以下、2型糖尿病の方の体内における変化についてご説明いたします。
2型糖尿病の方の多くが、肥満により「インスリンの血糖を下げる力」が低下
→ 血糖を下げるためにより多くのインスリンが必要となる
→ インスリンを出している膵臓のβ細胞が疲弊し、過労(死)状態となる
→ β細胞が減少し、インスリンの分泌量が減少する
→ β細胞は血糖値を下げるホルモンを分泌することのできる唯一の細胞であるため、インスリンの分泌量減少によって血糖が下がりにくくなり、血液中のブドウ糖濃度は高いままとなる(高血糖)
3.健康診断でわかる糖尿病
ご自身の健康診断結果を確認し、健康診断結果票の判定や医師の指示に従いましょう。
次のうち、どれか1つでも該当した方は、糖尿病の疑い(糖尿病型)があります。
※糖尿病には、下記以外の診断基準もあります。
①血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)
② HbA1c(過去1~2カ月前の血糖の平均)
次のうち、どれか1つでも該当した方は、糖尿病予備群(糖尿病の境界型)です。
※糖尿病予備群には、下記以外の診断基準もあります。
①血糖値(血液中のブドウ糖の濃度)
② HbA1c(過去1~2カ月前の血糖の平均)
健康診断を受けることの最大のメリットは、病気の早期発見・早期治療であり、多くの場合、自覚症状がないところから、身体の状態を一通り調べていくことになります。したがって、健康診断で行われる検査は、身体の主要な部位について“広く”検査を行い、精密検査が必要な部位を探していく、というイメージになります。単に、血糖値などの糖代謝検査のみを行っているだけでは、それに関連する検査項目以外の身体の“サイン”を把握することができませんが、健康診断において、広く一般的な検査を行うことによって得られる情報が増え、結果的にそれが正しく身体の状態を評価することにつながります。また、頻度は少ないものの、糖尿病合併症が示唆されるような所見(たとえば、眼底出血や下肢の皮膚変化など)が認められることもあります。
4.糖尿病の原因と予防
ここからは、糖尿病の予防及び日常生活の留意点(改善のためのポイント)についてお伝えします。なお、医療機関を受診されている方については、必ず主治医の指示に従ってください。
(1)内臓脂肪を減らす
内臓脂肪の蓄積により「TNF-α」「FFA」「レジスチン」という物質が増加します。その物質によって「インスリンの効きが悪くなる」「血液中の糖が使われない」「血糖値の上昇」といったことが起こります。内臓脂肪を減らすためには体重と腹囲を減らし標準体重を維持することが大切です。BMIが25以上の方や、腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上の方は減量を心がけましょう。
現在の体重から3%減量することで血液データの改善が得られるといわれています。そのためまずは、3-6ヶ月かけて現在の体重から3%程度減量することを目標にしてみてはいかがでしょうか。
減量の基本は「摂取カロリー」が「消費カロリー」を上回らないようにすることです。食べる量を調整して「摂取カロリー」を減らし、体を動かし「消費カロリー」を増やしましょう。糖尿病予防には食事・運動両面からのアプローチが重要です。
(2)食事方法を見直す
①規則正しく食べる
朝食・昼食・夕食を決まった時間に食べる習慣を付けましょう。空腹時間が長くなると空腹後に摂取した食事により血糖が急激に上がりやすくなりますし、ドカ食いにもつながります。また、インスリンを出すβ細胞は、食事の時間を覚えてインスリンの準備をするということが明らかになりつつあります。したがって、安定的かつ効率的なインスリン分泌のためには、朝食は午前8時頃、昼食は12時頃、夕食は19時頃までに食べるようにするなど、食事の時間を一定にすることが重要であると考えられています。
②食べる順番や食べる速さを見直す
食べる順番や食べる速さを見直すことで、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。食べる順番について、食事の際に野菜を最初に食べること(ベジファースト)が推奨されるということはご承知の通りであり、この方法は血糖値の急上昇を防ぎ、糖尿病予防や管理に役立つとされています。しかし、このベジファーストが一般に広く伝わる過程で、その効果や目的がやや誤解されるようになったといわれています。本来のベジファーストの研究は、「野菜だけを食べて10分休んだ後に米だけを食べる」という特定の条件下で行われたものであり、その結果、食後の血糖値が抑制されることが示されました。一方で、一般的に広まったのは「野菜を先に食べればよい」「野菜を先に食べると痩せる」という単純化された形でした。目的は、血糖値の急上昇を防ぐことにありますので、副菜(野菜など)や主菜(肉や魚など)から先に食べること、そして、ゆっくりよく噛んで食べることがポイントとなります。
(3)食事内容を見直す
①食物繊維を積極的にとる
上記の通り、食物繊維には消化管からの血糖の吸収を抑える効果があるため、食物繊維を積極的に摂ることで食後の血糖値の上昇が緩やかになることが期待できます。また、食物繊維は消化に時間がかかり、お腹に長く留まるため、満腹感が持続しやすくなります。食物繊維を多く含む食品は、主に「野菜類」「キノコ類」「海藻」「果物類」ですので、これらの食品を積極的にとるようにしましょう。
※果物類には糖質が多く含まれていますので食べ過ぎには注意しましょう。
1日の摂取量の目安は、以下の通りです。
野菜・キノコ類・海藻類:350g程度(生野菜だと両手いっぱい分、茹でると片手いっぱい分程度)
果物:200g程度(握りこぶし1つ分程度)
②間食は控えめに
間食をすると血糖の高い状態が続き、インスリンを分泌するβ細胞に負荷がかかります。1日の間食の目安摂取カロリーは200kcal程度までとされており、見た目量で表現すると1日に片手で収まる量です。食べすぎに注意しましょう。
間食を控える方法としては、以下のような方法があります。
また、甘い飲みものにも糖分が多く入っています。水やお茶、ブラックコーヒー、無糖紅茶、無糖炭酸水など、無糖飲料に置き換えてみましょう。
③主食に偏ったメニューにならないようにする
お米、パン、麺類などの主食には糖質が多く含まれています。「ラーメン+チャーハン」、「うどん+天丼」、「パスタ+パン」など主食の重ね食べをしている方は1食当たりの糖質の量が過剰になっている可能性があります。糖質は体の中で消化吸収され「ブドウ糖」に変わり、血糖値を上昇させます。また、ブドウ糖が多すぎる場合、余分な分は中性脂肪として蓄積され、肥満の原因にもなります。重ね食べを控える、大盛りやおかわりを控えるなどして主食の摂りすぎに注意しましょう。うどんやラーメンなどの麺類は塩分の過剰摂取にも繋がりやすいため、麺類の頻度を減らしお米を主食とした定食を食べるようにすることがおすすめです。
(4)運動を心がける
有酸素運動により筋肉への血流が増えると、ブドウ糖がどんどん細胞中に取り込まれることによってインスリンの効果が高まり、血糖値は低下します。また、筋力トレーニングによって筋肉が増えることでも、インスリンの効果が高まり、血糖値は下がりやすくなります。ただし、運動しない日が3日程度続くとその効果は失われてしまうとされています。また、有酸素運動と無酸素運動の両方を行うことで基礎代謝が上がり、それによって減量の効果も高まります。
1日30分程度を目安に、ウォーキング・速歩・水泳・サイクリングなどの有酸素運動を行うようにすることをおすすめします。ウォーキングだと1日に10000歩程度歩くことが効果的であり、さらに、その際に持続的に20分程度速歩きを取り入れることが目標とされています。また、連続しない日程で週に2~3日の筋力トレーニングを行うことが勧められています。最近の研究では、有酸素運動と筋力トレーニングを組み合わせることによって、より良い効果が生まれることが明らかとなっています。
運動のタイミングとしては、原則、いつ行っていただいても構いませんが、食後30分から1時間後に運動を始めるとより効果的とされています。食後30分から1時間後に血糖が一番上昇するためです。
(5)節酒を心がける・休肝日を設ける
ビールやワイン、カクテルや果物が入ったサワーなどの甘いお酒は糖分が含まれているため血糖値を上昇させます。また、アルコール自体に、インスリン分泌を抑える働きがあることから、高血糖を招きやすくなります。したがって、アルコールの種類に関係なく、節酒を心掛ける必要があります。アルコールの1日あたりの目安量は、1合(ビール500ml/缶チューハイ7% 350ml 1缶/ハイボール2杯/日本酒180m/焼酎100ml/ワイングラス2杯程度)までであり、週に2日はお酒を飲まない日を設けることを推奨します。
(6)禁煙する
たばこを吸うと糖尿病にかかりやすいことが、国内外の多くの研究によって明らかにされています。喫煙することによって交感神経が刺激されることで、血糖値が上昇しやすくなるためです。また、タバコは血糖を下げるホルモンであるインスリンの働きを妨げます。
(7)ストレスを溜めない
心理的ストレスを感じたとき、自律神経の交感神経が活発になるため、血糖値を上げるホルモンの分泌が活発になります。さらに、ストレスに晒される時間が長くなると、血糖値の上昇も慢性化しやすくなります。ストレスによる血糖値上昇を防ぐためには、ストレスの解消が一番の対策となり得ますが、誤った方法でストレスを解消しようとすると、その解消方法によってさらに血糖値が上昇しやすくなることがあるため、注意が必要です。ストレス解消の手段を飲食や喫煙等に頼るのではなく、散歩や親しい人との会話、趣味など、自分に合った複数のストレス解消法を見つけておくことが大切です。